遠い北の荒海からやってきた

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先月末の夕方、親父が「牛小屋の中で、見たことがない鳥がひょこひょこと歩いていたから、見てみろ!ちょっと弱ってるみたいだ。」と持ってきたのが、この鳥。

パッと見で種類はわからず、初めて見る鳥だなぁ、なんだろう?と、とりあえず、記録として写真を撮ろうと顔の部分をアップにした時に驚愕、なんだこの鼻は!

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海鳥の仲間でこのような鼻を持っているものが確かいたはず、ミズナギドリの種類かもしれないなと叶内さんの「日本の野鳥」のミズナギドリのページを急いでめくりました。でも、鼻の形が若干違う・・・、さらにページをめくっていくとあった!クロコシジロウミツバメの鼻とそっくり。これはウミツバメの仲間に違いない。でも、この個体と同じ羽の色をした種類がこの図鑑には掲載されていない・・・。

今度はインターネットでウミツバメの仲間を検索。するとすぐに羽の色が全く同じ種類が見つかりました。

ハイイロウミツバメ(Oceanodroma furcata)という鳥でした。

学名がわかれば、正確な情報をつかむことができます。(BirdLife International 2009. Oceanodroma furcata. In: IUCN 2011. IUCN Red List of Threatened Species. Version 2011.2. . Downloaded on 10 February 2012)英名は”storm-petrel”。北の荒海の波間を歩くように飛ぶ姿から、水の上を歩いた聖ペテロにちなんで名付けられたそうです。

File:Oceanites oceanicusPCCA20070623-3634B.jpg – Wikipedia, the free encyclopedia
こんなイメージでしょうか?

この鳥は、カリフォルニア~アラスカ~千島列島にかけての太平洋北部に分布しています。(分布域のマップはこちら)繁殖期以外は、遠い沖合の洋上で生活しているので、観察する機会がとても限られるとのこと。特徴的な鼻は、管鼻と呼ばれる器官で、血液中の余分な塩分をここから排出するそうです(海鳥はこの塩分調節機能を持っているため、淡水のない外洋で生活できるそうです!)首筋から雨覆にかけての白いグラデーションが冬の北の海を思わせます。

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数は非常に少ないですが、南房総でも時々落鳥したものが観察されています。鳥見と農業の先輩である、うなうさんも以前同じ地区内で落鳥した個体を拾ったことがあるとのことでした。この個体は非常に衰弱していたので、加湿保温をして、スポーツドリンク等で水分補給しながら回復を待ったのですが、残念ながら亡くなってしまいました。できれば、北の海に戻って欲しかったのですが・・・。(その後、こちらで外部計測をした上で、うなうさんの伝手で大学の先生のところへお送りして、活用して頂くことになりました)

今度は洋上で元気に波間を飛び交うハイイロウミツバメを目にしてみたいものです。

コメント

  1. 冬将軍 より:

    鼻の機構には驚きですね。
    この仕組みを、海水の淡水化技術に応用したりできないもんかなぁ~。
    自然界にはまだまだ我々の学ぶべきところは山のようにあります。

    それにしてもこのハイイロウミツバメとの出会い、なにか必然的なものだったのかもしれませんね。
    他でもなく、ほんまる農園にたどり着いたのは、ここなら何かをわかってもらえるからと直感で感じたのかも。

    絵本になりそうな感じ。

  2. ほんまる より:

    冬将軍さん

    この海鳥の生態は驚きですよね!

    出会いについては、そんな神秘的なものではないかと思います(もし、そうだったらうれしいけれど)。

    実際には色々とおもしろい現象は起きていて、こちらがそれに気づくことができるかどうかが重要かなと。今回の件で、日々の観察をもっと大事にしなければいけないなと痛感しましたね。

  3. ブルドッグ より:

    ハイイロウミツバメのお知らせ、びっくりしました。コシジロウミツバメは北海道で見たことがありましたが、これは写真でも初めて、どのようにして房総に迷ってくることがあるのでしょう。出会いはやはり、なにかが与えてくれたのでしょう。弱っている個体にきちんと手当てしていただいたことがその証左と思っています。写真も素晴らしかった。
    その場に同席したかった思いが湧いてきます。セイタカシギ、タゲリ、そして今回のケース。素敵な鳥見のフィールドですね。

  4. ほんまる より:

    ブルドッグさん

    ありがとうございます!
    この寒い冬が影響しているのか、ここ最近の年と比べて冬鳥の動きが異なっているのかも知れません。
    本当に見れば見るほど発見のある場所です。

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