赤い、アオオサムシが語るモノ

うちの庭に姿を現したこの昆虫。

夜行性の虫なので、なかなかこの綺麗な姿を目にした方は少ないかもしれません。

この虫はアオオサムシといいます。

えっ、全然青くないのに!と思うかもしれませんが、南房総の鴨川地溝帯(以下の図を参照)より南にいるアオオサムシは赤くなることで有名。その体色から”アカオサムシ”なんて呼び名で呼ばれることもあります。

鴨川地溝帯周辺の活断層の分布と周辺の地形(宍倉ほか, 1999. 房総半島における鴨川地溝帯北縁断層・南縁 断層の変位地形と完新世の活動について, 活断層研究 18 23~30,より引用

実はこのオサムシの仲間は、後翅が退化していて飛ぶことができません。

そのため、移動する能力が弱いことから、山や川などの地理的な障壁によって、簡単に他の地域のオサムシの集団と隔離されてしまいます。このような事情から、各地域で独自に進化したオサムシの集団が形成されてきました。

琵琶湖博物館:電子図鑑「日本&滋賀県のオサムシ」
日本のオサムシを検索するならこちらのサイトがおすすめです。

この各地域にオサムシのDNAを調べて、進化の歴史を明らかにしようとする試みが近年さかんに行われています。

その結果がとても興味深いので、少し紹介します!

今現在日本に分布しているオサムシが、

  1. 約1500万年前、日本列島が大陸から分離する際にそこに乗ってやってきたグループ
  2. 約200万年前からの氷期に大陸と陸続きになった陸橋を渡ってやってきたグループ

に分けることができるとのこと。

過去の地史的イベントが現在のいきものの分布にどのような影響を与えているのかを示すとてもおもしろい事例です。

赤いアオオサムシがなんで南房総にのみ分布しているのか?このオサムシが辿ってきた遠い歴史に思いを馳せます。

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