6月初旬、海沿いの南房総の里山の山肌は、鮮やかな黄緑色に染まっています。
それは、南房総地域に多く植栽されているマテバシイ(Lithocarpus edulis)という樹木 が新芽を開いているからです。
このマテバシイは潮風に強く、表土が浅い立地でも旺盛によく育つ性質があります。
そこで、南房総地域では、江戸時代から昭和40年代にかけて、アサクサノリ養殖のためのソダヒビ材(ノリを付着させる資材)や、鯖節の製造や家庭で用いる薪炭材にするために、盛んに植栽されてきました。また、風をよけるための防風林や土地の境界林として用いられることもありました。
しかし、 網ヒビ(海苔網)を用いたノリ養殖への変化やエネルギー革命によって、ソダヒビ材や薪炭材としての有用性がなくなってしまった現在、マテバシイ林と人との関係性も急速に失われてしまいました。
今では人々からあまり顧みられることがなくなってしまったこのマテバシイ林ですが、一際映える鮮やかな黄緑色の新緑の絨毯を見せることで、その存在を主張しているように感じられます。
コメント
「ブロッコリーがたくさんある…」これは、学生時代の九州出身の友人が、初めて房総にドライブで一緒に訪れたときの言葉です。あのブロッコリーにこんな歴史があったとは…。
「天空の城ラピュタ」の最後、空に飛んでいくあのブロッコリーみたい・・・。
マテバシイはナラ類シイ類の中でも、実が大きくて食いごたえがあっておいしいですよね(^.^)
えぇ、貧乏学生のつまみとしては最高です!
(小さいけど、味はスダジイとかの方がおいしかった記憶が・・・)
つい先日、主人と「房総の初夏の緑は黄金色だよね」と話していたばかり。これを読んで、目からウロコが落ちました。
ところで、南房総は表土が浅いのです?か
ogu-komeさん
ブロッコリーとはいい得て妙ですね。あのモコモコした樹幹がそう思わせるのでしょうね。
その森林がどんなふうにできあがってきたのか紐解くと、そこにたくさんのストーリーが秘められていて、とても興味深いです。
冬将軍さん
「天空の城ラピュタ」にでてくる樹木のモデルとなったと噂されている樹木としては、ケアンズ周辺で見られるCurtain fig tree(Ficus virens)がありますが、樹幹の形はマテバシイの方が似ているかもしれませんね。
南房総のマテバシイの実は、縄文時代には貴重な食料として利用されていたようです。南房総市内にある加茂遺跡からは、人の歯型のついたマテバシイの実が発掘されているくらいですから。今では、森林に生息するイノシシやシカの食料源になっています。ドングリを食べたイノシシやシカの肉はそれはもう言葉にならないくらい美味しいです。
babamioriさん
房総半島では海岸近くまで丘陵地が迫り、急な斜面で表土の浅い立地が海岸付近でも比較的多く見られます。そのような場所でもマテバシイは旺盛に生育してくれるので、重宝がられたようです。
『マテバシイ』やっとこわかりました。ありがとうございます。2月に房総へ出かけて、電車に揺られながら、巨大ブロッコリー(ほんと、ブロッコリーなんだもん)はなんだろうと、疑問だらけで帰って来ました。(房総の旅は、超楽しかったわけですが)一緒に行った母にも、会うたびにあれわかった?と言われておりまして・・・教えてあげたら大喜びするでしょう。まるで、1本の木で山ができているように見えて、どうやって登るのかなとも思っています。
カントリーヌ・ドンブリ さん
コメントありがとうございます。
巨大ブロッコリーの謎が解けて、よかったです。
昔、人々が利用していた名残りで、マテバシイは1本の太い幹ではなく、株元から何本も幹を出す樹形をしています。今は利用されることが少なく、幹が成長して大きくなっているので、木登りの難度はあがっているかもしれませんね。
これから、新芽の季節。6月初旬の時期の”黄金色の絨毯”は、それは見事ですよ~。